特殊な能力

 祭りも終わりに近づいた。さっきまで五十人は並んでいた焼き鳥屋台の列が短くなっていた。人気の屋台なので今年も無理かとあきらめていたが、行ってみた。列の一番後ろに、顔見知りの美人で有名な女主人が並んでいた。そこから後ろは並んでいても品切れになるかもしれないという標識役だった。前には五、六人だったので品切れになったらそれはそれで仕方が無いということで並んだ。
 どうやら買えそうだった。後ろを振り返ると、八人並んでいた。焼き台を見ると焼き鳥は三十八本ある。後ろの八人の買いたい本数の合計が二十八本なので、差引十本から少し余裕をみて八本注文した。
 私の八本がパックに詰められるのを待つ間に、後ろの八人の購入希望本数が何故分かるかという疑問に答えたい。瞳の中に買いたい本数が見える。八人の瞳の中の数字を合計したら二十八だった。そういう訳だ。
 焼き鳥を受け取って、列の後ろにいる女主人に「さようなら」を言おうと振返った。彼女の右の瞳には栄養ドリンクのビンが三本、左の瞳には恵比寿様が三人笑っていた。「疲れたーーーー。でも、まずまずだったかな」ということだろう。


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