ある写真

犬の散歩の途中で、少し離れた町の町内会の掲示板の前で、立ち止まって眺めた。行方不明の人の捜索願いが貼ってあった。A4サイズの用紙に名前と特徴と写真が入っていた。写真に暫く見入ってしまった。一番最初に目を惹くのが満面の笑み。腰から上くらいの写真でブルーのポロシャツを着ている。このブログの背景より少し濃い青だ。首にレイを掛けている。場所は室内で、背景には掲示板があり、紙が貼ってあるが、書かれている文字はアルファベットのようだ。どこか南の島だろうか。手には何か持っている。撮影の前にプレゼントとして渡されたのだろう。レイもそのとき首に掛けてもらったのだろう。さあ、記念写真を撮ろう、ということで撮った写真から、本人だけ切り出したのだろう。嬉しさが飛び出してくる笑顔だ。両側には、掲示板にこの紙を貼った人も写っていたのかもしれない。良い写真だ。
この掲示を見たのが2月2日のこと。記憶は薄れてきたが、日に焼けた、骨ばった顔、骨格が露わな精悍な顔だった。笑顔も、笑顔になった骨格が良く分かった。80何歳かの男性だった。良い写真だけれど、捜索願いの掲示に載せたい気持ちも分るけれど、笑顔を絶やさない人だということも分るけれど、そうはいってもこの写真の人にも笑顔が絶えるときがあるはずだ。だから笑顔でない写真も載せておおく方が、人捜しについては有効ではないかと思う。姿を消したのは去年の10月。