偶然の出会い

大抵の人が、あこがれの人に偶然に出会えたらいいなと思っていると思います。そして出来ればこんな場面で、とも考えていると思います。その人が悪者五、六人に絡まれているところに出くわして、悪者をばったばったと投げ飛ばし助けるというように。私にも一つ、考えている場面があります。
図書館の書棚には本が背中合わせに並んでいますから、書棚を挟んで書棚の両側にいる人は、向かいあっていることになります。本を探して移動しているうちに二人が真向かいにくることもあり、本の上端と上の段の棚板との隙間から向かいの人の顔が見えるはずです。私の希望する偶然の出会いは、こういう出会い、図書館で本の隙間をとおして偶然に出会う出会いです。本を探す人の目の焦点は本の背表紙に合っており、五十センチ先の真正面のところに顔があっても普通は九分九厘認識しませんが、私はこういう出会いを想定していますから見逃しません。
昨日それが起こりました。具体的な状況は少し違いましたが。少しではなくだいぶかもしれません。
この季節、暑いですから、ショートパンツからすらっとした足を出した女性が図書館に来る事もあります。何故か私の探している本がそういう女性の隣の一番下の段にあるのです。不思議です。周りから図書館を消してみれば、ショートパンツの女性の隣に私がしゃがんでいます。同じ方向を向いてはいますが、私の眼球が目いっぱい端に寄ってるのではないことまでは見えなかったでしょう。こういう場面で発見されてしまったのです。
いずれにしても「夢は必ずしも叶わないわけではない」ことを実感しました。叶い方に多少の異同はあるかもしれませんが。