立ち往生

朝の散歩で会うその人の走るフォームは静かなフォームだ。歩幅は狭く膝は上げない。腕は脇に付けてあまり振らない。とは言っても歩くよりは速いから、後ろから追い抜いていくが、こちらの歩く速さとあまり変わらないので、ゆっくり距離が離れて行く。その間、後姿をしばらく見ていることになる。動きの少ないその人の後姿に、一つだけ動いているものがある。ゆっさゆっさと上下動を伴って左右に揺れるのはポニーテイル。ゆっさゆっさ、ゆっさゆっさ。遠ざかる後姿ではそれが目を引くから知らないうちに、それに目が行く。
通常五時半くらいに家を出て、一時間弱で戻るが、一度、気が付いたら散歩の途中の道路に立っていて時間が八時だったことがある。どうも揺れているポニーテイルを見ているうちに眠ってしまったようだ。