『コレクション中国同時代小説2』王小波

解説中に引用されている王小波の言葉。

(『愛人』は)初めて読んだとき、衝撃を受けるに違いないが、その後で、あら探しをする気持ちで何回か読むと、どのくだりをとっても綿密に推敲されているのに気がつくだろう。小説の最初のひと言、「私はもう老いた」という人生の遍歴を味わい尽くした観を与えるくだりから、最後の「彼は死ぬまで愛し続けると言った」という最後の絶望的な悲愴感のひと言で終わるまで、感情の変化はしっかりコントロールされている。出来事は時間の流れに沿って展開されるのではなく、別のロジックに従って筋道が立てられている。このロジックを僕は芸術と呼んでいるけれど、こういった書き方そのものが比類のない創造だ。僕はこれを自分ではつかんでいると思っている。僕自身もこうやって書いたからだ。つまり、小説の原稿をパソコンに入力した後、段落ごとに何度も移動させる。もとの小説が良くできていれば、次第にこの道筋をたぐりよせることができる。そして、当初の原稿に使った時間の三、四倍の時間をかけたときに一つの新しい小説ができあがるんだ。それはもとの小説とは比較にならないほど良くできている。                                                 (「用一生来学習芸術」)