『紅葉する老年』 旅人木喰から家出人トルストイまで 武藤洋二

著者は1939年生まれ。

自分にとって自分がやっかいになっても自分を他者へ預けない方がいい。手助けを断り続けたトルストイがここで参考になる。他者の手の中で脳は干物になる。脳は、自分勝手に遊ぶのが好きで、誰からも指示を受けず一頭一城の主としてふるまいたい。万事自分でやり、自分で考えるという命と脳のトルストイ的使い方で人生の後半を進んでいくと、命も脳も干からびることがないので、老年が砂漠にならない。砂漠地帯に自分で自分の体を放置するという終末直前のありふれた、したがって、恐ろしい光景は、アスターポヴォ駅での終末には、当然のこと、見られなかった。

陽気さとは命の正しい使い方である。