共感

ももを連れて坂を下っていると、広げたメモ帳を両手で持ち、一心に見ながら登って来る人がいた。近付くと表情は深刻だ。もっと近づいたところでメモ帳から目を上げてわたしを見たが、その目は何か見ているようで何もみていない目だった。手に持ったメモ帳はページを上下に開いていた。綴じてある部分を水平にして、上と下にページを広げていた。その広げ方でそれが何か分って、その人の表情にも得心がいって、分かります、分かります、と心の中で唱えて、すれ違った。