脱皮

8月の末に、ミカンの木の葉の裏にセミの脱け殻がくっついているのを見つけた。今日の夜半から明け方にかけての風雨で、もうなくなっているだろうと思ったら、今朝もまだ葉にくついていた。その頑強さで考えた。
長袖の前開きの上着を脱ぐときのことを考えてみました。まず前のボタンを全部外します。両腕を後ろに伸ばして、背後の誰かに上着の袖を掴んで貰います。そこでわたしが前に出ます。わたしから上着は外れます。上着は背後の誰かの手に残ります。
もしわたしが上着から脱け出している途中で、後ろの誰かが、上着の袖を掴んでいる手を離したらどうなるか。わたしがいくら前に出ても上着はわたしに着いてきます。わたしは上着から抜け出せません。半分上着を脱いだわたしがいます。
こう考えて、セミの脱け殻が昨夜の風と雨に飛ばされずにミカンの葉にくっついていたことが、納得できました。セミは、残りの半分の殻は後で脱ぐ、とか、もう一回殻に戻って脱ぎ直す、とか、そういうことは出来ない、失敗したら死、の一発勝負をするわけですから、殻にはしっかりと何かにしがみついていて貰わないと困るわけです。色はだいぶ褪せましたが。