山裾の道

山の裾に沿って蛇行している道では、遠くに現れた人が一度隠れます。次に見えるときには、見えなくなったときよりぐっと近くなり、大きな形になっています。そしてまた隠れて、また近くに大きな姿になって現われます。
近づいて来るのが心待ちにしている人だとして、山裾の道を見え隠れしながら近づいて来るのと、見通しのきく道を徐々に近づき、徐々に姿が大きくなってくるのとでは、見ていて別の気持だと思います。
どちらがお好みですか。

蛇行の道では、一旦見えなくなってしまいますが、それは道の構造から理に適ったことで、見えなくなったことには取り敢えず納得できますが、そろそろ見えるはずというところに、徐々に不安が増します。見通せる道で目を離さずに見ていたら、いきなり消えたとしたら、これは超自然現象です。待つ側が、そういう超自然現象の可能性を考えるような心理状態なら、見通しの良い道の方が不安かもしれません。

これを書く元になった、蛇行の道での私の体験では、見えて来る人は散歩のオッサンなので、消えても見えてもドキドキもハラハラもしませんが。