『おっぱいとトラクター』マリーナ・レヴィツカ、集英社文庫

asahi.comの書評で見て図書館から借りました。三分の一程読んだところですが、お薦めしたい。現在図書館のリクエスト待ちは五人です。

舞台はイギリスで背景はウクライナ。色んな問題が詰っています。国、民族、親子、姉妹、世代、性別、思想。「総花的」かもしれないが。植物のこと、食料のこともたくさんでてきます。
49歳の主人公の84歳の父が36歳の女と結婚し、結婚後主人公が初めてその36歳の女と会ったところを読んでいます。小説のなかでも実物は初登場です。その女の描写です、と、ここに書き写そうと思いましたが、長いので止め。顔の描写だけ書きます。

幅広の顔はきりっとひきしまり、頬骨は高く、小鼻が張っている。左右の目は離れていて、瞳はシロップのような金茶色、黒のアイラインはクレオパトラ風に目尻で跳ねあげてある。くすんだピーチピンクの口紅はふくらみを強調せんばかりに唇から大きくはみ出し、ふくれっ面にゆがむ口元は冷笑を浮かべているようにも見える。

その他いろいろ
ウクライナの国旗の上半分の青は空、下半分の黄色はトウモロコシ畑を表す」という記述があるが、その前の景色の描写には麦畑、じゃが芋畑、アブラナ畑がでてくるだけで、トウモロコシ畑が出てこない。不思議に思って調べたら「黄色は小麦」という説もあった。小麦にしろトウモロコシにしろ、穀物で、実るものが国旗のデザインの元になっているらしい(公式見解はないそうだから「らしい」)。「豊か」な感じがします。日本の国旗の真ん中の赤い円は、もし食料だとしたら梅干しですね。周囲は白米。まさしく日の丸弁当。ひょっとすると、弁当が先で日の丸が後かもしれない。

84歳の父が、食べ物を食べてむせるところが、何回かでてきます。誤嚥性肺炎に気をつけないと。それともその伏線?

原題は「A Short History of Tractors in Ukurainian」。「おっぱい」はない。直訳した題名では売れないと考えて「おっぱいとトラクター」にしたのだろう。しかし、題名をなるべく売れるような題名にするのはイギリスでも同じだと思う。それを敢えて「A Short History of Tractors in Ukurainian」で出したのは、そのままで、読者におやっと思わせる面白さが醸し出ていると判断したのだろうと思う。さすがはイギリスだと思った。ただ、売れることが先決だから、「おっぱいとトラクター」という、内容についての想像を拒む題名はそれはそれで良いと思う。
本当は著者が題名の変更に応じなかったということかもしれませんが。

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