己を知る

散歩のとき、いつの間にか10メートルほど前を人が歩いていたことがあった。地から湧くはずはないから、ぼんやり歩いている間に、横道から出てきたのだと思う。後ろ姿はかなりの年配で、歩き方もそおっと歩くといった感じで、あのくらいになれば無理は禁物、転んだら大変だ、でも歩くことは良い事だ、と共感しながら後ろを歩く。私ももう少し年を取ったらああいうふうに、大事に大事に、ゆっくりゆっくり歩こう、というようなことを考えながらしばらく歩いていて、気が付いたらその人との距離がまったく縮まっていない。あの人の歩く速度と同じ速度で歩いているのかと気が付いて、きびきびとさっさっと歩いているという、自分の歩く姿についてのイメージは間違っていたことを知った。