『エクソフォニー』母語の外へ出る旅 多和田葉子

もっと早く読めばよかった。

奥の細道』が「月日」という単語で始まるのが美しいのと同様、そのドイツ語訳がSonne und Mondで始まるのは美しい。Zeit(時間)では抽象的すぎる。

これ(sinnlich)は、官能的という意味の形容詞で、Sinn(感覚、意味)という名詞から派生しているが、同じ名詞から派生しているsinnvollとは全く意味が違う。sinnvollは、目的にあった、理性的な、有意義なという意味で、日常的にもよく使われる。
(中略)
文学の言語では、sinnvollなだけでsinnlichでない記述は困る。たとえば、主人公がなぜこれから伯母の家にいくのかということを説明するだけの文章は、いくら、粗筋を分らせるうえで有意義であっても、描写自体に言葉の快楽がなければ無駄である。sinnvollなのは伝達で、sinnlichなのは表現であると言うこともできるかもしれない。言葉の快楽は詩だけの課題であって小説には必要ないと思っている人がいるがとんでもないことで、小説にもいろいろな意味で言葉そのものの快楽がなければ困るとわらしは思っている。


図書館から借りて読んで、良かったので、熟読しようと購入した。こういう場合、購入後、読まずに置いておくだけということがかなり多いのだが。


多和田葉子ノーベル文学賞受賞!」大穴ですが、どうでしょうか。