続、音楽劇『橋を渡る』

終演後、アンケートを書いて駅に行って電車を十分ほど待ってということで、幕を下ろしてから四十分ほど後でしょうか、電車に座って前を見たら『橋を渡る』に出ていた役者に似た人が斜め向かいの席に座っています。パンフレットの写真を見て、そして座っている人(上を向いて目を閉じでいる)を見ましたが間違いありません。パンフレットを開いてみたり、ちょっとじろじろ見たり、目を合わせたら会釈をしようと、いろいろしてみましたが、目を瞑ったままでした。終演後、観客と同じ電車に演者が乗っているということが面白いな、と思いました。早い!です。次の仕事場に急いでいたのでしょうが、私の想像は、学童に子供を迎えに行くので大急ぎで劇場を出た、でした。
笹塚で乗り換えようと立ち上がったら、その人も立ち上がり距離が近づいたので話しかけました。
「さっき、出ていた方ですよね。あの蹴りはすごかったですね。お腹痛くなかったですか」
「あれは、お腹から少しずれたところに決まったので、とても痛かったです」
「劇、良かったです。頑張ってください」
「ありがとうございます」
二本松一には、終盤で蹴られるシーンがあったのです。勢いよく一之瀬幸子に飛びつこうとすると一之瀬幸子が長い脚を伸ばして(靴も堅そうな靴でしたね)、二本松一はその足に蹴倒されることになります。最前列ですから良く見えました。脚を突きだす、そこへ勢いよく走っていってぶつかる、ですから力学的に二倍の衝撃になります。倒れた二本松一に一之瀬幸子が片手拝みに謝っていましたがあれは本当の「ごめんなさい」だったのですね。