『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ 土屋政雄=訳

昨年9月にリクエストしたものが、順番が回ってきました。現在、蔵書数4で予約待ち17人ですから峠は越えたようです。
読み始めたところです。「読み始める」というより「’読むこと’に出発したところです」という表現の方がふさわしいかもしれません。58ページまで読んだところです。

当時のイギリスをこんなふうに描写するのは不本意だが、そこはそれ、やむをえないところもある。

最初に登場するのは語り手で、すぐに引っ込み、存在を忘れた頃−−大平野を歩いているさなか−−に再登場します。

当時、開けた土地での道探しは、いまよりずっと難しかったことを言い添えておこう。

聞き手にも言及があります。

黙々と歩く二人を見て、驚く方がいるかもしれない。いつもあれほどしゃべりあっている二人なのに、なぜこんな黙りこくって歩いているのか、と。だが時代が時代だった。

語り手のわたしがいて読み手のあなたがいて間に本がある、という構造のようです。


登場人物の「船頭」のせりふです。

「(前略)強い絆で結ばれていて、一緒に渡りたいという夫婦には、一番大切に思っている記憶を話してくれるようにお願いします。もちろん別々に。まず一人に聞き、つぎにもう一人に聞きます。この方法で、二人を結ぶ絆がどんなものかがわかります」

船頭さん、この手法は妥当ですか?ちょっと図式的ではありませんか?