痴人の愛

咲いても散ってしまう、という意味しかないなら「徒花」という語の「徒」は余分、ということになると思う。花は散るので、この意味からいえば徒花でない花はない、といえる。しかし、咲いても実を結ばない、という意味でも「徒花」は使われるから「徒花」という語は残る余地がある。それに対して「痴人の愛」という語に残る余地はないと思う。なぜなら「愛をもつ人は全て痴人」だから。「痴人」という集合の中に「愛をもつ人」という集合は含まれる(「愛をもつ人」は「痴人」の部分集合である)。この関係から次のようなこともいえる。痴人でない人は愛をもたない。痴人だからといって愛をもっているとは限らない。