そのときの寝場所

散歩のコースの途中に、ここにマットレスでも敷いて寝ころんだら気持ちが良いだろうな、という場所がある。幅二メートルはない舗装道路の上だ。車はあまり通らない。通ったら落ち着いて横のなっていられない。道路の両脇は、片側が田んぼ、片側が湿地で、それぞれ道路との間には雑草の部分がある。雑草の部分は虫が体に登って来そうな気がするので、嫌だ。書いていて気がついたのだが、蛇が横断する可能性はゼロではないので、やはり枕元や足元には何人か必要だ。背中に当たる感触がごつごつしているのは嫌だからある程度の厚さのある敷物は欲しいが、掛けるものはいらない、そういう気候が良い。その前に一番肝心と言うか、だからそこに横になりたい、という理由の、周囲が緑色になっている必要がある。片側の田んぼの稲の丈は、少なくとも二十センチは欲しいから、植えたばかりの産毛のような苗の段階より一か月は後、五月の末頃か六月の始め。「あともう少しで誕生日だったのにね」のような時期かもしれない。雨は困ります。アカシアの雨に打たれてこのまま死んでしまいたい、というような気持ちでは死にたくないから、やはり雨の日は避けたい。気温は少し高めだけれど風があるから助かるね、のような会話ができる気候が良いかもしれない。早まって改まった服装で来たそそっかしい誰かは額に汗が滲むかも。そうそう、田んぼの反対側の湿地の側は、舗装道路の部分、五十センチほどの雑草の部分、三十センチほどの細い水路、三十センチほどの黒土の部分、湿地、という並びになっているが、細い水路の上が雑草に覆われていて水路が見えず、道路の横の雑草の部分が続いているように見えるので、駆け回っていると、水路が分らずに、落とし穴に落ちるように、片足が水路に落ちることがある。子供の腿の辺りまで泥だらけになる。実際そういうことがあった。二十リットルのポリタンクに水を入れて、着替えと一緒に持って来るように、と言っておこう。誰かが落ちて、「ようやく意味が分かった。さすがだね」という感嘆の声も聞たいが、もうそんな年の子はいないかもしれない。