勘違い

「わたしは運が良いな」と思っていたら、そうたいした強運でもなかった、という話です。
ステージに向かって椅子十脚を一列とした列が六列くらい並んだ会場があります。椅子十脚は、中央に通路となる部分を空けて五脚づつ並べられて、両端も椅子と壁の間に間隔が空いています。会場に着いた順に前の方から詰めて座ります。再前列のステージに向かって右端が一番、一番の後ろの椅子が十一番、というよう、会場に着いた順番に座ります。何番に座るかに意味はありません。肝心なのはその後に引く籤で何番を引くか、であって、座る順番は、何番目に籤を引くか、というだけの意味です(早い番号が取りたいとか、偶数が良いとか、験を担いている人はいるとは思いますが)。わたしは、何番に座るかどうかは気にしていません。電車の時間などから、だいたい三十番台から四十番台に座ることになるのですが。ただ、日ごろ不思議だな、と思っていたのは、何故か「通路に面した椅子に座ることが多い」というとです。月に一回その会場に行くのですが、今月も通路に面した椅子だ、というように通路に面した椅子に座ることが重なります。両側を人に挟まれているより、片側に誰も座っていない方が精神的に楽ですから、そういうときは、ほっとして、運が良いな、と嬉しくなります。このことに関してはかなりの強運だな、と自信のようなものが芽生えていたのですが、あるときじっくり十脚の椅子の並びを頭の中に浮かべてみたら(会場に並んだ椅子を見て、ではなく頭に浮かんだ椅子で分ったというのも、不思議といえば不思議)、何とまあ、驚いたことに十脚のうち四脚は通路に面している。片側に誰も座っていない椅子に座れる確率は十分の四もあったのです。何となくもっと少ない確率だと思っていたのです。
これが表題の「勘違い」の中身です。