青梅雨
『青梅雨』永井龍男(「新潮」昭和40年9月号)
車谷長吉撰短編小説輯『文士の意地(下)』の冒頭に収録されている。
一家心中の話。冒頭に新聞記事を載せているから現実の一家心中の話という体裁。作中のエピソードを二つ書き抜きます。
○一家の主(77歳の男)は、当日の日中は、金策(借金返済はあきらめており、葬式費用を準備するため)に出掛けて、帰りの電車の乗り換え駅の売店で、二合瓶を買い、そのとき紙幣を硬貨に両替する。それは、お金の重みを強く感じたいためだと言う。
「それだけ(用意できた三万六千円)あれば、まあいいだろう。札というものは、頼りないもんだね。この酒を買って、釣り銭に五百円札をよこしたから、銀貨に換えてもらった。この方が、よっぽどしっかりしている」
○妻が聞く「山田さんの、病院へは」
癌で、長くなさそうな知人の入院先へは、寄ってこなかったと言う。
「[…]辛くて、顔を見る気になれない。ゆるしてもらうことにしたよ」
私の感想
人間の見方が「皮相」だと思った。そして「冷たい」と感じる。
私は、こういうものは、書きたくない。
(随分、思いきった感想を述べてしまいました)