『文学2005』日本文藝家協会=編

時は熟す−−「文学2005」解説−−中沢けい

馬小屋の乙女      阿部和重
空を蹴る        角田光代
海           小川洋子
片乳          小野正嗣
トクヤンクン      小林紀晴
夕餉          山田詠美
そらいろのクレヨン   蓮見圭一
人生の広場       池澤夏樹
寝室          江國香織
あなめあなめ      大庭みな子
星辰          河野多恵子
むかご         佐伯一麦
姫と戦争と「庭の雀」  笙野頼子
土木計画        多和田葉子
恋しくば        津島佑子
海の背広        平出隆
トンネルのおじさん   堀江敏幸
地上にひとつの場所を! 青山真治
櫻月          高井有一
R51・ルール     藤原智美
伝令兵         目取真俊
タイムシェア      茅野裕城子

記憶のある作品が何編かあったから、この本を読んだのだと思う。多和田葉子の作品は記憶になかった。私の好みも変わってきた。終わりまで読めなかったもの−−ある程度読めば終わりまで読むが、読めないものは読みだしてすぐに続けられなくなる−−は、「人生の広場」「寝室」「あなめあなめ」「恋しくば」だった。「典型だな」と感じたのが、「トンネルのおじさん」「櫻月」。前者は最近の典型、後者は昔の典型だろうか。「星辰」では、占ってもらう対象の人の名前を変えて占ってもらって、それでいいのだろうか、と今回は気になった。笙野頼子の作品には「S倉」が登場していた。