小檜山博さん

まだプロにはなっていない、小説を書く人たちの集まりに行った。同じ先生のいくつかの教室の合同の会だった。元編集者の先生の縁で北海道から小檜山博さんが来た。紹介があったときは驚いた。司会者の視線の先、会場の後方を振り返ると、ひとり異彩を放つ人物がいたが、その放ち方は瞬間的に私の頭に浮かんだイメージ−−髪は短髪、半白で、アノラックのような上着ジーパン、靴は運動靴−−とは違った。ダンディだ。がっちりした体格で顔だちも小説家らしい、深みと翳のある、重厚な顔だちだった。これならば、ご本人の書いたいくつかの小説の素材は、自身の体験の部分が大きいかもしれない、と想像した。黒のスーツに黒のシャツ、ベルトのバックルが光っていたように記憶している。
マイクを持って少しうつむきがちに話した話は、聞き手に話しているようでもあり、自分自身に語っているようでもあった。
会も終わり、散会ということで会場の出口に行ったところで、どこからか会場に戻ってくる小説家と会ったので、握手してもらった。
ここから先はあやふやな記憶で、あまり責任は持てないのですが、小檜山さんが来ているという紹介があたときの、同じ教室から参加した女性会員二人−−同じ円卓に座っていました−−の反応には驚きました。お一人は「キャーッ」と叫んで後方を振り返ったのですが、勢い余って椅子から転げ落ちてしまいました。もう一方は、椅子の上で微動だにしませんでした。「対照的に微動だにしませんでした」と書けないのが辛いのですが、こちらは椅子の上で失神していたのです。「ここから先は」から後の部分は、多分記憶違いだと思います。