『ひとり』 小林栗奈 集英社

六十代男性が引き込まれて一気に読んでしまった。気は若いつもりだが、この本が入っている「スーパーファンタジー文庫」という文庫の狙っている年代とは少し離れていると思う。『声』もそうだったが「牽強付会」なところはない。仕掛けが大きい。「秘められた謎」が明かされたときの驚きは大きかった。
題名の「ひとり」は、設定と、もうひとつ登場人物の一人の人間観と呼応しているということかもしれないが、ちょっとさびしい題名だと感じた。華がない。表紙カバーには二人の少女が−−そっくりだがひとりは目を開き、ひとりは目を閉じ−−ガラスを挟んで向きあって、手の平を合わせて立っているのだが、題字の「ひとり」が横書きだ。真ん中に二人を引き裂くように「ひとり」と縦書きにしたらどうだったろうか。で、題名は、私なら「ピーナツひと粒落ちた」とします。
『声』も『ひとり』も、巻末の作者のあとがきが、作者の日々の生活が覗けたような気がして、親しみを感じ応援したくなる。