『ルンタ』 山下澄人

『abさんご』の場合は、「こういう形の型の破り方」があるのだと感じたと思う。この作品も同様に「型破り」だと感じるが、「こういう形」に当たるものが浮かばない。とにかく「型破り」を目の前に突き出された。この本には栞がない。紙を挟んでおくのだが、挟み忘れたり、取れてしまっていたりして、どこまで読んでいたかあいまいになることが何回もあった。最初は記憶を辿ってどこまで読んだかを探してそこから読んだが、あとになったら適当に、この辺かな、というところから読んだ。むしろ、「ぱっと開いたところから読み始めて適当なところで読み終わる」を繰り返して読む本なのかもしれない。長くない本だが細切れに読んだのは、読み始めても何故かあまり長くは読み続けられなかったから。
乗馬についての記述は「体験に基づいているな」と感じた。それは良い、悪いではなく、この作品全体の調子からみると「不徹底」あるいは「尻尾を残している」ということになるのではないかと思う。
読後感は爽やかです。是非読んでみてください。
引用は、「こんな文章がありますよ」というだけの意味です。

マミはときどき口をあけて空を見ていた。そのときマミは宇宙の外にいた。ナカノにはわかる。ミシマにはわかるまい。いや、わかっているのかもしれない。

ルンタが真上に跳ねて飛んだ。そして、人間をその勢いで踏みつけて、走り去って行った。人間は動かなくなった。人間は頭を踏まれていた。頭の半分がつぶれていた。


もちろんその人間とは私のことだ。

昨日中西に会った。いや、今日か。明日か。忘れた。