その扉の向こう、ではなくここがそこでした

畳の部屋なら畳の枚数で分かるが事務室のような部屋だと広さが良く分からない。6畳より広い。8畳というと正方形の部屋が頭に浮かぶが、そこは正方形ではなかった。扉のある辺が短い長方形だった。長方形の8畳間といったところか。新宮市立図書館の玄関の前に着いたときには、新宮駅近くのホテルから15分ほど歩いただけだったが、かなり汗をかいていた。リュックは背中が暑い。7月22日の午前9時の数分前だった。
三階にある部屋が最初に書いた部屋で、扉の内側すぐ右手に扉があったので、その扉の向こうに、ガラスケースの中に直筆原稿が展示されているような部屋があるのだろう、と考えたがそうではなかった。足を踏み入れた事務室のようなその部屋が「中上健次資料収集室」だった。想像とは違ったけれど、違って良かった。ガラスケースの中にいろいろ展示してある、という部屋だったらぐるっと廻っただけで帰ったと思う。その事務室のような部屋で、係りの人に資料を見せて貰いながら丁寧に説明して貰った。直筆原稿も見せて貰った。もちろんコピーだが。用紙はA4版か、それより一回り大きかったか。用紙を横長に使い縦罫線だけの用紙に文字がびっしり書いてあった。字は「丸字」という感じで小さめの文字だ。係りの人の説明では、一枚に400字詰め原稿用紙で4,5枚分、だったように記憶している。一枚全部をとおして、文字の大きさや字体が変化しないことに驚いた。おそらく何枚も何十枚も変わらぬ文字で原稿が続くのだろう。「集中力」だろう。偉大な「集中力」だ。
(今、インターネットで調べてみました。「コクヨの計算用紙、B4判の横型に縦の罫線だけが入っている紙」という記述がありました)
パソコンの前に座ってDVDも見せて貰いました。係りの方に頂いた名刺の名前の漢字を見て、珍しいですね、部品はシンプルなのにあまり見ない漢字ですね、言ったら、電話で名前を言うと名字の方を教えて、と言われるんですよ、という返事だった。変なことを言うな、と思ったけれど、まあいいか、と思いながらもう一度名刺を見なおして、名字のふりがなを見て合点がいった。(わたしは、自分はその手の事を言うのが好きなのに、人の言うそういう言葉に対しては鈍感だ。自分勝手ということだと思う。反省しなければいけない、と最近良く思う)。同じ名字でも、男性の場合はネタにはならないのだが。