『推し、燃ゆ』宇佐見りん

主人公の「あかり」は、「推し」の関しては、勤勉、克己、合理的、学究的等の言葉で表現できる行動をとれる。「推し」について書いている文章も沈着冷静で明晰だ。「推し」に対する自分の関わり方を「あたしのスタンスは作品も人もまるごと解釈し続けることだった。推しの見る世界を見たかった」と
言っている(この一節以外でも「解釈」という言葉を使っており、「解釈」が「推し」との関わりについてのキーワードになっているようだが、わたしには、ここでの「解釈」という言葉のイメージが浮かばなかった)。
こういう「あかり」だが「推し」に関すること以外では、うまく生きられていない。母や姉との関係が原因なのだろうか。その辺りーー家族の問題ーーについては、書き古されたことに思える。
「推し」活動に徹して、書いてほしかった。