クリスマスツリーの先端が二つに割れた話

朝六時前にモモと公園を通り抜けたときは暗かった。迷路風に配置してある、高さ六十センチくらいのコンクリートの壁があるが、その上にいつもは無い黒い影が見えた。公園にはジャンパーや帽子など、忘れ物はよくあるが、かなり高さのあるその黒い影は何か見当が付かない。先端が尖って裾が広がっていて高さは七十センチくらいか。歩きながらじっと目を凝らして見たが、そんなものがあるはずは無いが小さなクリスマスツりーが、コンクリートの壁の上に乗っているような形だ。
そのツリーの先端が二つに分かれて、二つの人間の頭部になった。一つは髪が長く、手がその髪を整えるような動きをした。一年に三百日くらい早朝にここを歩くが初めて見る光景だった。
どういう二人なのだろう。車ではない。車であればそこが手っ取り早い二人の世界になる。どこかで朝まで飲んだか歌ったかして歩いて帰る途中なのだろう。家は近いのだろう。同じ家ではないだろう。分かれ難い朝。

一つの影が二つに割れて、別れにゃならないこの先は。
隣どおしの家だけど、無限の遠さがありまする。