ねじめ正一『ぼくらの言葉塾』岩波新書

この本の中にあった石垣りんさんの詩です。

    着物

犬に着物をきせるのは
よいことではありません。


犬に着物をきせるのは
わるいことでもありません。


犬に着物をきせるのは
さしあたってコッケイです。


人間が着物をきることは
コッケイではありません。


古い習慣
古い歴史


人間が犬に着物をきせたとき
はじめて着物が見えてくる
着せきれない部分が見えてくる。


からだに合わせてこしらえた
合わせきれない獣のつじつま。


そのオカシサの首に鎖をつけて
気どりながら
引かれてゆくのは人間です。

『略歴』より

何故引用したかと言いますと、かねがねモモが雨合羽を着た姿が間が抜けて見えると思っていたのですが、それが私だけの感覚ではなかったのか、と思って引用しました。