『声』 小林栗奈 集英社

推理と怪奇が無理なく融合していると思った。誰が犯人かのヒントが提示された後、判明までにはまだいろいろあるかと思ったが、あっさり犯人が判明した。手にしている本には残りのページがまだ半分弱ある。これは二編入っているのかと思ったりしたがそうではなかった。作者は「皆さん、お楽しみはこれからよ」と言いながらここから後の部分を書いたのではないかと思う。自分でもわくわくしながら書いたのではないかと思う。ストーリーの山場が記述でも山場になっている。そこを読んでみるとそこまでに発生した個別の惨劇の描写が巧みだったことを思い知る。人物では〈素子〉よく書けていると思った。
いくつか気がついたこと。
チェーンメールの仕組みが呑み込めなかった。(A、B、C)と三人のリストの入った手紙を受け取ったDは、一番最初のAに蛇の絵を送り、リストを(B、C、D)として、同じ手紙を二人に出すのだが、その二人は、手紙には指示がなく、誰でもいいらしい。それでなおかつ、手紙の指示通りにするとひとりのところに八通の絵を書いた手紙が届く、ということだが、そうなのか?
ところどころ(どちらかというと山場ではないところ)に出てくる常套句が気になった。〈水織真吾がその一人であることに異を唱えるものはいないだろう〉〈つきまとう女の子は枚挙に暇がない〉。一度目に読んだときにはあちこちにあったような気がしたのですが、読み返してみると、いくつもないです。

ちょっと京極夏彦を思わせた。
大作を書ける人だと思う。