一枚の写真

画面中央から左奥に向かって(この文で「左」「右」というのは「向かって左」「向かって右」です)、金属製の円形のテーブルが二つ、くっつけられて並んでいる。それを囲んで七人が左奥から右手前に向ってテーブルを囲んでいる。左奥にふたりの女性が立っている。そのすぐ右に椅子に座っている女性がひとり。この三人は同年輩で四十半ばだろう。左の二人は職場でも仲良しでいつもきゃっきゃっと笑っていたに違いない。今もそんな風に笑っている。座っているひとりは口元がほころびかけている。左側のふたりより少し後輩なのだろう。先輩の手前少しおとなしくしているが、喋りだしたら止まらない、というのが口元に表れている。一番左の女性の前のテーブルには四十センチほどのプラスチックの足の台の上に高さが五十センチほどの樽が乗ったものがある。テーブルの上には小麦色の液体が入ったプラスチックのコップと枝豆が見える。ということは、大きな樽には生ビールが入っているのだろう。良く見れば蛇口もついている。コップには星のマークと「SAPPO」というような文字が見える。後ろにビルが写っているから屋外のビヤガーデンに違いない。左から四人目は中腰で立っている六十八才くらいの男性だ。おそらく一番手前に座っていたのを撮影のため移動したのだろう。そこから右の人物はみんな椅子に座っている。まず七十半ばの男性。引き締まった顔と体つきは山登りでもするに違いない。おそらく三十数年前に同じ職場で働いていただろう七人のなかの、一番の上司に違いない。その隣は六十八才くらいの男性で、がっちりしている。ずっと続けていたマラソンをちょっと体調を崩して止めていた間に少し肉が付いてしまった、といった感じだ。その右隣に座っている女性は隣の男性の奥さんではないかと思う。優しい笑顔でカメラを見ている。後ろに写っているビルの壁面にネオンが見える。左隣のビルより奥まっているので先頭の文字が見えずに「國屋書店」の文字だけが見える。
こんな写真だ。じっと眺めると、七人みんなの目から、三十数年の時間を経て集まったことについての感慨が、にじみ出ているように私の目には見える。写真の右隅に橙色で「2015 07 24」の文字がある。