隊列の中から

ガードレールで車道と仕切られた、人ひとりがようやくという幅の歩道を、五、六人の小学生の隊列が真っ直ぐ学校に向かって遠ざかって行くのを、真後ろから見送った。一年生のひ孫一は隊列の真ん中辺りが定位置で後ろには上級生が数人歩いているが、整然と行進しているわけではないので、後ろの子の背中の隙間からひ孫一かどうかわからないが、小さな背丈の子の頭も見え隠れする。小さな背丈の子の頭が振り返った。ひ孫一だった。わたしを認めて手を振った。わたしも手を振った。それから前に向き直って歩き始めた。何秒も経たないうちにまた振り返ったひ孫一の顔が、後ろの子の背中の隙間から見えた。手を振った。わたしも手を振った。それから前に向き直って歩き始めた。何秒も経たないうちにまたひ孫一の振り返った顔が見えた。手を振った。わたしも手を振った。そこからは振り向かずに歩いて行った。
隊列の中で振り返った顔がひとつであったことと、三回という回数のためだと思うが、「西部戦線異状なし」のエンドロールの映像と、記憶の中のあの場面は似ているような気がするが、似ているだけであってほしい。