錯覚

スーパーで氷の浮いた水槽の中にあるサンマをトングで挟んで透明なビニール袋に入れて口を縛る。袋に入れるときは、ビニールの外側にサンマが触れないように慎重に袋の中に落とし込む。ビニールの外側にサンマに付いていた水が付くと、ビニールの口を縛るときに、その水が手に付いて、手に魚の生臭さが付いてしまう。

慎重に慎重にビニール袋の口を大きく広げてサンマを落して、よし大丈夫、とビニールの口を縛ろうとするときに、手の指先に水を感じた。そんなはずはない。納得できない。念のために指先を目の前に持ってきて、さらにこすり合わせてみた。濡れていない。サンマにビニールの外側から触れたときのヒヤッとする感覚で、濡れた、と思ってしまうのだと思う。濡れる可能性のある場面で、濡れたら嫌だなと思ってもいるからだろうが、「冷たい=濡れた」と思ってしまうようだ。