『話の終わり』リディア・デイヴィス

小説を書いていく過程を書いた小説。作者は「いなくなった男の話だ」と言っているが、一般的に言えば恋の話。終わる過程が長い恋の話。

だがそんなことを考えていると、カウンターの男が私の座っている高い本棚の陰までやってきて、私の方に身をかがめ、優しい声で紅茶を飲むかと訊ねた。それを持ってきてもらうと私は彼に礼を言い、口をつけた。紅茶は濃く熱く、舌が干からびるほど苦かった。

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これが話の終わりであるようにそのときの私には思えたし、しばらくは小説の終わりでもあった。−−その紅茶の苦さには、はっきりと何かが終わったという感じがあった。その後、あいかわらずそれは話の終わりではあったものの、私はそれを小説の最初にもってきた。

下記に書いた奥泉光氏の言葉に、ぴったり当てはまる作品だと思った。

http://d.hatena.ne.jp/paradise041310/20120818/1345264186