『さよならニッポン』から『夢を与える』へ

『さよならニッポン』高橋源一郎 2011年」

引用です。

 『インストール』や『蹴りたい背中』は、ぼくたち(小説の玄人)のは、わかりやすい。小説の玄人が話し合える話題(簡単にいうと「文学(的)」)が詰まっているからだ。
 しかし『夢を与える』は、小説の玄人にとって、わかりにくい。何を話題にすればいいのか、途方に暮れる。
 そこがいいのだ。
 この小説の、ほんとうの読者は、ぼくの授業の出てくるような、小説の素人である学生たちだ。彼らは、文学のことばを知らない。そういう人たちに向かって、この小説は書かれている。
 そうであるべきなのだ。
 小説というものは。

この本の中で引用されている小島信夫『残光』の部分

私は空想とは、ただ遠くへ遠くへ飛んでいってしまうということではなく、凡庸なものたちの間では、無関係であるものどうしのなかに、関係のある紐帯を見つけるというようなことをいうのだ、とかねてから持論にしているのです。

『夢を与える』綿矢りさ 2007年

良かった。